ドミニクアンセルベーカリー上陸。ハイブリッドスイーツとは何ものなのか?



ドミニカアンセルベーカリーがオープン


ニューヨークで大行列を作る人気店「ドミニクアンセルベーカリー」が6月20日にオープンしました。オープン前日にメディア向けの発表会を大々的に行ったり、テレビや雑誌、ウェブでもよく紹介されたりしているので、知っている方は多いでしょう。

ドミニクのクイニーアマンを意味する「DKA」、クッキー生地で作った凹型のグラスにミルクを入れた「クッキーショット」、チョコとバニラのジェラートをギモーブに包んでバーナーで焼いた「フローズンスモア」はもちろん人気商品ですが、何よりも注目されているのはクロワッサンとドーナツを合わせたハイブリッドスイーツ「クロナッツ」です。

と言うのも今、日本ではハイブリッドスイーツが流行しており、まさにそのど真ん中をいくスイーツだからです。

ハイブリッドスイーツ


ハイブリッドスイーツは他にもあり、ざっと挙げただけでも以下の通り、様々なものがあります。

* クレームブリュレ+パンケーキ=クレームブリュレ パンケーキ
ニューヨークラウンジ@ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
* フレンチトースト+揚げパン=フレンチトースト フリッター
アール フリッターズ
* クロワッサン+たい焼=クロワッサンたい焼
築地 銀だこキッチン
* クロワッサン+ベーグル=クローグル
ナノ ユニバース ジ オーク フロア
* フレンチトースト+ワッフル=フレンチワッフル
エール・エル ワッフルカフェ
* ドーナツ+マフィン=ダフィン
スターバックス
* ティラミス+ロールケーキ=ティラミスロール
ティラミス スペシャリテ シーキューブ
* ビスケット+サンドイッチ=ビスケットサンド
チェルシーカフェ
* クロワッサン+スコーン=クロワッサンスコーン
アフタヌーンティー ティースタンド


日本へ進出していないハイブリッドスイーツもまだあります。

* タルト+ブラウニー=タウニー
Bea's of Bloomsbury
* クロワッサン+マフィン=クラフィン
Mr.Holmes Bakehouse
* ブリオシュ+マフィン=ブルフィン
The Bruffin Cafe


日本には既に多くのハイブリッドスイーツがありますが、海外で注目されているハイブリッドスイーツはまだまだあるのです。

本家登場


このハイブリッドスイーツを流行させたのが、冒頭で紹介したニューヨークのドミニクアンセルベーカリーであり、2011年のオープン以降、世界で注目されるようになりました。

その後、日本へ上陸するまでに4年の時を隔てましたが、その間に熱が冷めなかったのは何故でしょうか。

それは、先にリストアップしたようにトレンドを先取りして他の店でもハイブリッドスイーツを販売したり、日本発のクロワッサンドーナツ専門店「アンジェリークNY」がオープンしたりしたことで、クロナッツに対する関心も維持されたからです。しかも、ようやく本家のクロナッツが上陸すると報道されており、まるでそれまでのハイブリッドスイーツはドミニクアンセルベーカリーのためにお膳立てされたというような盛り上がり方をしています。

ハイブリッドフード


ところで、ハイブリッドスイーツではなく、ハイブリッドフードに目を向けると面白いことが分かります。

「ハイブリッド・フード」とはある食べ物とある食べ物をあわせると予想もしなかった味になる組み合わせの食べ物のこと。
~中略~
「ハイブリッド・フード」の一例としては、
「きゅうり」+「蜂蜜」=「メロン」
「ミカン」+「海苔」+「醤油」=「イクラ」
「紅茶」+「レモン」+「生クリーム」=「甘酒」
「マグロ(赤身の刺身)」+「マヨネーズ」+「醤油」=「大トロ」
「豆腐」+「ヨーグルト」=「クリームチーズ」
「ウーロン茶」+「炭酸」=「ビール」
「コーヒー」+「炭酸」=「ウインナーソーセージ」



2011年にはこのハイブリッドフードが話題となっていますが、ハイブリッドスイーツとは少し異なり、食べ合わせによって味覚が変わることをもってハイブリッドフードと呼んでいるのです。

ハイブリッドフードは複数の食べ物を組み合わせて食べることを意味していますが、今流行しているハイブリッドスイーツはもう一歩進んでおり、複数の食べ物を融合させることによって新しい食味と食感を生み出しているのです。

ハイブリッドスイーツの課題


東京にはフランスやイタリア、スペインなどのヨーロッパはもちろん、中国や韓国、タイやベトナムなどのアジアなど、世界中の食べ物が集まっています。

これらに加えて、昨年サッカーワールドカップ開催地になったことで注目されたブラジル料理や、今年に入って増えているテクスメクス料理が盛り上がってはいるものの、新しいものは少なくなっていると言ってよいでしょう。さらには、今はまだ日本にはない新しいものとなると、例えばマグレブ料理を除いたアフリカ料理のように、日本人に馴染みにくいものとなる傾向が強く、日本で受け入れられるのも簡単ではありません。

そういったことを鑑みると、慣れ親しんだ食べ物を掛け合わせて新しい食べ物を作るハイブリッドスイーツはまさに美食大国の日本にうってつけの食べ物であり、新しいが変わり過ぎていないものを食べたい客にとっても、万人に注目してもらえるトレンドを紹介したいメディアにとっても相応しい食べ物であることは確かです。

しかし、問題もあります。

言葉だけが一人歩きして、何でもかんでもハイブリッドスイーツにしようという動きもあります。これも言葉の定義が存在しない熟成肉と同様の問題をはらんでおり、例えば、ドーナツで何かをサンドしただけなのに「ドーナツ+サンドイッチ=ドーナツサンドイッチ」となったり、既にその組み合わせで完成されているイタリア シチリアのブリオッシュ・コン・ジェラートがブリオッシュ+ジェラートのハイブリッドスイーツとして紹介されたりすることには違和感を覚えます。

ハイブリッドスイーツは広義には「複数のスイーツを合わせたスイーツ」という共通認識がありますが、やはりそれだけでは足りず、できあがったスイーツが新規性や創造性を伴っていなければ陳腐になってしまうと危惧しているのですが、どれをハイブリッドスイーツとして取り上げるかはメディアの良心でもあり、ハイブリッドスイーツの本家であるドミニクアンセルベーカリーが上陸した今「ハイブリッドスイーツとは何ものであるのか」と改めて問い直す必要があります。