食べログ「ベストレストラン2014」に探り箸



恒例のベストレストラン


先日、食べログから「ベストレストラン2014」が発表されました。

食べログが2007年から発表している、その年の1月から11月までの投稿をもとに算出したランキングで、レストラン、スイーツ、ランチにカテゴライズされ、都道府県別に分かれています。

2014年1月~2014年11月の口コミ・評価をもとに、独自の重み付けによる算出方法で、料理・味、サービス、雰囲気、コストパフォーマンスなどを5点満点で評価した、食べログユーザーがつくるレストランランキングです。


本題へと入る前に、食べログの点数について簡単に説明しておきましょう。

食べログでは、レビュアーによってレストランの点数への影響度合いが異なっています。具体的な計算式は公表されていませんが、よく訪れているジャンルから「食通度合い」を算出し、それを係数として使用して反映しているので、たくさん口コミを投稿しているレビュアーの点数が色濃く反映され、口コミ数が少ないレビュアーの点数はほとんど反映されなくなっています。

単純平均ではなく加重平均を採用しており、特に口コミ数が1000を超えるようなトップレビュアーは影響力が強いです。

トップ10を比較


東京ベストレストラン2014の傾向を「東京ベストレストラン2013」と比べてみることで分析してみましょう。

ただ、特に味覚を始めとして、レストランの好みは十人十色なので、ここでは「あのレストランがこの順位なのはおかしいのではないか?」という疑義を投じるのではなく、どうしてそのような順位になっているのかを、客観的に考えてみたいと思います。

まず東京ベストレストラン2014のトップ10はこちらです。各項目はレストラン名、点数、昨年の順位と点数、地域、ジャンルという順番になっています。

1. 松川
4.53(16位 4.42)
六本木一丁目、神谷町、溜池山王 / 割烹・小料理

2. さいとう
4:45(1位 4.74)
六本木一丁目、神谷町、六本木 / 寿司

3. レフェルヴェソンス
4.44(3位 4.68)
表参道、乃木坂、広尾 / フレンチ

4. 晴山
4.42(46位 4.32)
三田、田町、白金高輪 / 懐石・会席料理

4. くろぎ
4.42(15位 4.47)
湯島、上野広小路、上野御徒町 / 懐石・会席料理

6. ガストロノミー ジョエル・ロブション
4.42(215位 4.04)
恵比寿、目黒 / フレンチ

7. 傳
4.41(5位 4.62)
神保町、九段下、竹橋 / 懐石・会席料理

8. かぶと
4.40(99位 4.21)
池袋、要町、北池袋 / うなぎ

9. 日本橋橘町 都寿司
4.39(6位 4.60)
馬喰横山、東日本橋、馬喰町 / 寿司

10. エスキス
4.38(114位 4.18)
銀座、有楽町、日比谷 / フレンチ


続いて東京ベストレストラン2013のトップ10はこちら。

1. さいとう
4.74
六本木一丁目、神谷町、六本木 / 寿司

1. 京味
4.74
新橋、内幸町、汐留 / 京料理

3. レフェルヴェソンス
4.68
表参道、乃木坂、広尾 / フレンチ

4. ロオジエ
4.64
銀座、新橋、日比谷 / フレンチ

5. 傳
4.62
神保町、九段下、竹橋 / 懐石・会席料理

6. 日本橋橘町 都寿司
4.60
馬喰横山、東日本橋、馬喰町 / 寿司

7. 銀座レカン
4.54
銀座、銀座一丁目、東銀座 / フレンチ

8. 虎白
4.53
飯田橋、牛込神楽坂、神楽坂 / 懐石・会席料理

9. フロリレージュ
4.52
外苑前、表参道、乃木坂 / フレンチ

9. 鷹匠壽
4.52
浅草(東武・都営・メトロ)、田原町、浅草(つくばEXP) / 鳥料理


松川は口コミ数が少なくとも


東京ベストレストラン2014で1位となった松川は、2011年にオープンされた比較的新しいレストランで口コミ数も全60件と少なく、東京ベストレストラン2014および東京ベストレストラン2013のトップ10に入ったレストランの中では、口コミ数が最も少ないです。口コミ数が少ないのは、23席と小箱であること、完全紹介制および完全予約制というシステムであること、さらには隠れ家的であることが原因となっているでしょう。

点数に大きな影響を与えるようなトップレビュアーは色々なレストランを食べ歩いているだけに、こういった希少性が高いレストランは心に刺さるので有利になります。点数という観点からすれば、口コミ数が多くてもトップレビュアーが投稿しないレストランよりもずっと効率がよいです。

2014年の対象期間だけで見てみると、口コミ数は15件とさらに少ないですが、うどんが主食氏のように有名トップレビュアーが何人も訪れて高得点を付けていることを考えれば、ランキングトップに踊り出たことも納得できます。

さいとう、レフェルヴェソンスは堅調


鮨のさいとうとレフェルヴェソンスは引き続き上位をキープしています。口コミ数を見てみると、さいとうは全275件、レフェルヴェソンスは全348件と非常に多く、しかも、どちらとも7割程度の点数が4.0を超えて安定感があるだけに、今後も上位をキープし続けることが予想されます。

レフェルヴェソンスのシェフを務める生江史伸氏は、食から未来を考える「いただきます・プロジェクト」で副代表を務めるなど、ミシュランシェフを超えた存在となっており、今後最も注目されているシェフの一人です。

変動があるも納得


晴山の口コミ数は全170件、そのうち対象期間は30件程度と少ないものの、トップレビュアー数人が5.0満点の点数を付けているので、躍進したのでしょう。

一方、フレンチの雄ガストロノミー ジョエル・ロブションの口コミ数は全682件、そのうち対象期間は51件と多く、ほとんどの点数が4.0を超え、トップレビュアーによる5.0点もいくつか見掛けられます。東京ベストレストラン2013ではトップレビュアーの投稿数が少なかったので215位となってしまったことと比べると対照的でしょう。

くろぎは東京ベストレストラン2013でで15位から4位へと躍進しましたが、評価は4.47から4.42となっているので安定しており、傳は5位から7位へと、日本橋橘町 都寿司は6位から9位へとやや順位を下げています。傳は、TIRPSEで史上最速のオープン2ヶ月でミシュランガイド1つ星を獲得した寺田惠一氏が今修業しているレストランとしても、今年さらに注目したいです。

かぶと、エスキスは急上昇


かぶとの口コミ数は全225件で、そのうち対象期間は23件と少ないですが、どの点数も4.5を超えており、トップレビュアーも何人か見掛けられます。もともと評価が高かったレストランではあるものの、東京ベストレストラン2013の99位から8位へと上がったのは、2014年6月にニホンウナギが国際自然保護連合の絶滅危惧種に指定され、ウナギの希少価値が高まったこととも関係がありそうです。

エスキスは東京ベストレストラン2013の114位から10位へと上がりました。口コミ数は全141件、対象期間は27件となっており、フレンチに精通したK.ハミルトン氏が昼夜ともに5.0の評価を付けるなど、トップレビュアーからの点数が特に高いです。オープンした2012年当初はゆっくりとした滑り出しのように感じられましたが、素晴らしさが伝わってきたのでしょう。

食通のためのベストレストラン


食べログのベストレストランは毎年楽しみにしているのですが、点数の集計方法がトップレビュアーの影響力を色濃く反映するようになった2012年3月1日以降になってから、よくも悪くも、より食通のためのものになってきたと思います。

ベストレストランは特に、その年の1月から11月までの口コミを集計するという性質上、その期間内にトップレビュアーに訪れてもらって高い点数を付けてもらうことが攻略方法になっており、いくつかの問題を孕んでいるように感じられます。というのも、同じレビューは同じレストランに1回しか口コミを投稿できないので、再訪して点数を更新した場合にどのように反映されるのか不明確ですし、トップレビュー以外の数多くの<普通のレビュアー>の点数が反映されにくいのは本当によいだろうかという気もするからです。

このようなシステムになっているのであれば、ベストレストランはいっそのことトップレビュアーのみを選者にした方がすっきりとするように思います。私が存じ上げている範囲内では、トップレビュアーのみなさんは本当に食通の方ばかりなので特に違和感もありません。

ユーザーのためのグルメサイト


食べログは、一目でグルメサイトだと分かるように右手で箸を持ちあげたロゴを採用していますが、自身のことを以下のように説明しています。

食べログは「お店選びで失敗したくない人のためのグルメサイト」をコンセプトとしております。
今までのグルメサイトは、掲載料を払ったお店だけをデータベース化し、さらにそれらお店からの一方的な宣伝情報を掲載するのが主流でした。そこにはお店側が発信した情報しか掲載されないため、その情報だけを頼りにお店選びをした結果、実際に行ってみて「サイトに掲載している情報と違う」「想像とは違うお店だった」と思うケースがよくありました。
食べログはそんなお店選びの失敗を無くすため、まずは日本全国のお店を無料でデータベース化。さらにお店側からの情報発信だけではなく、実際に利用した人の意見や感想を集めて共有していくことで、お店選びで失敗しない、本当に信頼できるグルメサイトを実現しています。
まさに「ユーザーの、ユーザーによる、ユーザーのためのグルメサイト」なのです。



食べログは「お店選びで失敗したくない人のためのグルメサイト」をコンセプトにした「ユーザーの、ユーザーによる、ユーザーのためのグルメサイト」ですが、点数を不正に上げる<やらせ投稿>への対策で、レビュアーに携帯電話番号認証を導入したり、レビュアー毎に点数の重み付けが異なる加重平均を採用したりして、評価の健全性に務めてきて成功していますが、その結果「ユーザーの、ユーザーによる」から「トップレビュアーの、トップレビュアーによる」へと緩やかに変化しているように感じられます。

2014年4月9日に日本へ上陸した世界を席巻するyelpも全く寄せ付けず、月間利用者数5000万人以上、月間PV数12億以上、総口コミ数575件以上という日本最大のグルメ集合知を蔵する食べログが、点数のアルゴリズムをよりよいものへと開発していく過程で、約54万人の全レビュアーとそのうちの僅か約0.1%に過ぎないトップレビュアーの間で、最終的にどこで箸を置くことになるのか、食べログのいちユーザーとしても気になるところです。